誰か知る松柏後凋の心

たれかしる しょうはくこうちょうのこころ

起訴後勾留は人権侵害である

最近は少しニュースに取り上げられる頻度は減ったが、日産自動車の元会長ゴーンさんの勾留が長引いていると話題になっている。二度の保釈請求が認められなかったからだ。 しかし、そんな物当たり前なのが今の刑事司法である。大阪地検特捜部がらみでニュース…

病院情報システムのプロジェクト、そして次世代のプロジェクトリーダー

先日、仕事先でプロジェクトのキックオフの会に参加してきた。 今月初めに新しく決まった、大学病院のシステム更新の仕事である。 私としては国循を起訴休職となった2014年11月以来、医療情報システム分野では久しぶりの仕事となる。4年のブランクが気にな…

新たなプロジェクト

私が国循を退職したのは2016年8月である。 自ら望んで退職したわけではなく、国循サザンの裁判が継続中、つまり刑事被告人の立場のまま雇用契約期間の満了を迎えてしまったので如何ともしがたい状況であった。 事実上のキャリアの終焉である。以降、私は医療…

検察側証人の《切り込み隊長》斬られる。

下記の記事をFacebookにエントリした。その趣旨は「してやったぜ!」ということを示すためではない。 彼が検察側尋問に対して行った証言は、検察官が取り調べで作成した調書の趣旨にほぼ沿ったものであったと思う。彼は「証人テスト」も受けていたので、そう…

やっていない罪を認めるわけがない、と思いますか。

神戸新聞、2017/12/03の記事より。 これが「社会正義」なのか 論説委員室 森玉康宏 「やっていない罪を認めるわけがない、と思いますか。勾留されて取り調べを受けてごらんなさい。あなたもいちころですよ」 ある冤罪(えんざい)事件をめぐる集会で、虚偽自…

初めての被告人質問を終えて

本日、初めての被告人質問が終わりました。 よく「証言台に立つ」と表現される場面ではありますが、実際には座っておりまして・・・。座り心地も悪い。まあそれはさておき、証言台のところに座ってみると裁判官の顔がよく見えるんです。 八田さんの「被告人…

被告人はどこに座るか

半年ぶりにブログを更新します。 私は公判では弁護人席に座っています。傍聴席からみて右側です。しかし、一般的に、被告人は裁判官と向き合って座ることが多いようです。 この写真は、 大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所のWebサイトの「法廷の内部」*1に掲載…

”被告人による証人尋問”を体験して

第7回公判では,被告人である私自身が証人(検察側証人)の反対尋問を行う場面がありました。 ほとんどの公判において,尋問は,検察官と弁護人によって行われるものです。被告人が尋問を行うことは,制度上許されることであっても,実際にはなかなかあるこ…

邂逅

法廷の休憩時間に,私が廊下を歩いていると,突然,私の後ろから,私の昔のあだ名で呼ぶ声があり,私は驚いて振り向きました。 そこには,すらりとした長身の,私と同年代ぐらいの男性が立っていたのです。 もう一度,彼は「久しぶり」と私に声をかけました…

被告人は弁護団の一プレーヤー

刑事事件の弁護人の『選び方』について,私が尊敬してやまない八田隆氏のブログ *1にこのような記載があります。 「高名な弁護士先生に全てをお任せしたい」という人もいれば、私のように「インフォームド・コンセントが重要。自分も弁護団の一員として機能…

第3回『国循サザン事件』公判を終えて(本人感想)

昨日の公判は無事終わりました。わざわざ傍聴に来て下さった皆様,Facebookで応援してくださった皆様,ありがとうございました! 今回の証人である調達責任者の西田氏の証言は,私が想定していたものよりもかなり「トーンダウン」していました。 ブログを途…

勾留生活~開かない窓,閉まらない窓~

『国循サザン事件』での勾留中の話をつづけます。 ブログを途中から読み始めた方のために:この事件は,私が官製談合防止法違反という無実の罪のかどで起訴され被告人となり,現在,大阪地裁で裁判が行われている事件のことです。詳しいいきさつは, 国循サ…

勾留生活~時計のない拘置所で時刻を教えてくれるものとは?~

前回のブログでは,勾留生活で一番辛かったこととして,拘置所では時計がなく,時刻を知る手段がないことを挙げました。 勾留生活でいちばんつらかったこと - 誰か知る松柏後凋の心 ブログを途中から読み始めた方のために:この事件は,私が官製談合防止法違…

勾留生活でいちばんつらかったこと

今回は,いったん『国循着任直後に直面した課題シリーズ』を離れて,別の話題で記事を書きます。 ブログを途中から読み始めた方のために:この事件は,私が官製談合防止法違反という無実の罪のかどで起訴され被告人となり,現在,大阪地裁で裁判が行われてい…

とにかくモノが足りない!【国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)シリーズ④】

私が国循着任したのは,電子カルテ稼動のわずか4ヶ月前でした。このシリーズ①②で,電子カルテの仕様書に問題があったことはすでに述べました。 国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)①~記載の乏しい仕様書~ 国循着任直後に直面した課題(電子…

コンサルは本当に第三者なのか?【国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)シリーズ③】

本シリーズ①において,国循のT室長(私の病院業務の前任者)が, われわれが直接ベンダと交渉すると公平性が失われるので,コンサルを通じてそのようなベンダとの交渉を行う必要がありました。 と発言したと書きました。 今回は,コンサルを活用すれば公平性…

国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)②~「多くの入札参加者を募るために」作られた仕様書がもたらした災いとは~

前回のブログでは,私が国循に着任直後,電子カルテの仕様書を見て,その記載の乏しさに驚いたということを書きました。国循では,情報システムを管理する立場にある者が,「多くの入札参加者を募るために」,本来,明確にすべき要件の記載を削ってしまうこ…

国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)①~記載の乏しい仕様書~

私は2011年9月に国循に着任しました。 私の最大の使命は,2012年1月に予定されていた国循の病院情報システム(以下では,簡単のため『電子カルテ』といいます)導入を成功させることでした。私に与えられた時間はたった4ヶ月間。まさに火中の栗を拾う作業で…

国循の情報システムを管理する部署の仕事とは

今回は,私が国循でどのような仕事をしていたか,について簡単に書きたいと思います。 私は国循において,医療情報部長と情報統括部長という職にありました。(ついでに図書館長もしていましたが,それはおいておきます) 医療情報部は,国循の病院業務で利…

私が国循で働くようになったわけ

平成23(2011)年8月上旬ごろ、私は、当時の上司である松村泰志先生(大阪大学医学部附属病院医療情報学講座教授)から教授室に来るように言われました。 そのころ,私は,平成23年3月から松村教授の下で准教授として仕事を始めたばかりの時期でした。松村教授…

わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』⑥(最終回)~取り調べ可視化と司法取引~

今回が,私の心のバイブル『取調べを受ける心がまえ』*1シリーズの最終回になります。 なお,この『バイブル』の原典は,岐阜弁護士会美和勇夫弁護士の著された『美和ノート』*2です。 さて,最終回は,取り調べ可視化と司法取引について書いてみたいと思い…

わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』⑤~供述調書に納得すれば署名していい?~

今回は,私の心のバイブル*1の神髄部分,『供述調書』について書きます。 この『バイブル』で,著者ら(岐阜弁護士会美和勇夫弁護士と大阪弁護士会秋田真志弁護士)が最も言いたいことは,間違いなく 納得できない供述調書に署名をする必要はない ということ…

わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』④~作り出される矛盾に苦しむ被告人~

前回のブログの最後に, 被疑者が真実を話すのであれば,その話と矛盾する証拠など出てくるわけがない と考えることは間違いだと書きました。 証拠には,物証と人証があります。ここでは大まかに,前者が文書,後者が証言と考えます。

わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』③~なぜ検察は知りたがるのか~

前回のブログでは,取り調べがいかにつらいものか,ということを私の体験を交えて書きました。 では,どうやって取り調べに向き合えばよいのでしょうか。 そこで,バイブル*1の登場です*2。バイブルでは,被疑者の心がまえとして,つぎのようにアドバイスし…

わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』②~検事にいわれてつらかったこと~

前回のブログでは,身体拘束されている勾留中の取り調べは長くつらいもの,と書きました。 しかし,自分の身が自由にならないから,という理由だけで,取り調べがつらいのではありません。これにくわえて,取り調べには, あなたの言い分を、取調官に分かっ…

わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』①~調べは山登りやマラソンのように長くつらいもの~

2014年2月に国循に強制捜査が入ってから,同年11月に逮捕されるまでの間,私(桑田)が心のバイブルとしていた冊子があります。 大阪弁護士会の秋田真志弁護士が,ご自身の事務所のホームページで公開しておられる『取調べを受ける心がまえ』*1です。 *1:htt…

弁護士の法廷技術は大切

本日の私のFacebookでも紹介したのですが, このような,弁護士の「法廷技術」,とりわけ「プレゼンテーション技術」に対する需要の高まりは,裁判員制度の導入に始まるものです。 『裁判員裁判第1号事件傍聴記』*1 弁護人の冒頭陳述は,全体としてみれば,…

『サザン』のわけ

私(桑田)が2014年11月に逮捕,同年12月起訴された事件は,「国循不正入札事件」「国循入札情報漏洩事件」などと呼ばれることもあるようですが,私は,これを『国循サザン事件』と呼んでいます。

このブログについて

このブログのタイトル 誰か知る松柏後凋の心(たれかしる しょうはくこうちょうのこころ) は,二十六歳で安政の大獄にて命を落とした幕末の武士,橋本景岳(橋本左内)の獄中詩(七言絶句)の一節から取ったものです。