誰か知る松柏後凋の心

たれかしる しょうはくこうちょうのこころ

国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)①~記載の乏しい仕様書~

私は2011年9月に国循に着任しました。

私の最大の使命は,2012年1月に予定されていた国循の病院情報システム(以下では,簡単のため『電子カルテといいます)導入を成功させることでした。私に与えられた時間はたった4ヶ月間。まさに火中の栗を拾う作業でした。

今回からしばらくの間,私が着任直後に,国循で直面したさまざまな課題について書いていきたいと思います。今回は第1回目として,『記載の乏しい仕様書』を取り上げます。

記載の乏しい仕様書

私が,国循が電子カルテの調達のために用意した仕様書を初めて目にしたとき,その記述量の少なさに大変驚きました。調達価格が約20億円にもなるシステムの仕様書として,その質はおくとしても,まず絶対量が少なすぎると感じました。私は,印刷物として綴じられたペラペラの仕様書をみて,思わず,

えっ,これだけですか。

と声を上げて驚きました。このような仕様書は,現場が必要とする機能が十分に盛り込まれず,曖昧なものとなっている可能性が高いのです。この場合,最終的には,仕様書のすべての記載部分について,再度,現場とのヒアリングを行い,現場で要求する機能(運用)を再確認しなければならないため,

これは大変だな,間に合うのかな?

と感じられました。

この仕様書の作成に関与したのは,私の前任者であるT室長でしたが,彼に,

なぜこのような曖昧な仕様書になったのでしょうか。

と尋ねると,T室長は,

現行ベンダ(システムを導入する企業)だけでなく,どのベンダでも広く入札に参加できるように配慮した結果です。

仕様書は,コンサルが現場ヒアリングをして作成したものなので,仕様書の内容は自分の責任においてできたものではありません。

という回答をされました。同時に,T室長は,その当時,国立がん研究センターで情報システムの調達に関わった職員が,特定ベンダに肩入れする発言をした由で処分を受けたことを例に挙げ,

公平な入札をするためには,特定のベンダが有利になるような機能は削らざるをえません。

われわれが直接ベンダと交渉すると公平性が失われるので,コンサルを通じてそのようなベンダとの交渉を行う必要がありました。

その結果として,ある程度,曖昧な記述内容の仕様書ができてしまっても仕方ないと思います。

ということを私に話しました。

私は,契約係のような入札担当事務職員がこのようなこというのであれば納得できますが,情報システムを管理する立場の人間がいうのは大きな間違いであると信じています。入札参加者を募るためだけに仕様書の内容を歪めることは本末転倒です。理由のいかんを問わず,必要なシステムの機能は,できるだけ正確に仕様書に反映させるべきです。

※曖昧な仕様書がもたらす弊害については,次回書きたいと思います。

もちろん予算の制限がありますので,なんでもかんでも仕様書に入れるのは無理です。現場から要望があり,しかし,予算の関係で削らざるをえない機能については,その部分をどのように運用するのかを考えておかなくてはいけません。場合によっては,もっと安価な方法で実現できる代替機能を仕様書に組み込む必要もあるでしょう。しかし,国循の電子カルテ仕様書は,そのような配慮がほとんど読み取れないような代物でした。

(次回につづく)

国循官製談合事件,いわゆる国循サザン事件について知りたい方は,こちらのサイトをごらんください。↓