コンサルは本当に第三者なのか?【国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)シリーズ③】
本シリーズ①において,国循のT室長(私の病院業務の前任者)が,
われわれが直接ベンダと交渉すると公平性が失われるので,コンサルを通じてそのようなベンダとの交渉を行う必要がありました。
と発言したと書きました。
今回は,コンサルを活用すれば公平性が担保されるのか,すなわち,コンサルって本当に第三者なんですか? について述べたいと思います。
2012年1月にリリースされた国循の電子カルテ*1に関して,①仕様書作成時と②入札後からシステム導入までの2つのフェーズにわけてコンサル(X社)が関与しました。
①の仕様書作成時には(桑田の着任前です),X社の担当者が現場へのヒアリングを行い,仕様書の取りまとめを行いました。つまり,X社は,いわゆる「国循電子カルテの仕様書作成業務」を受託していたのです。
つまり,私の前任者が言いたかったのは,
という理屈です。私からみれば,いかにも,お役所らしい,事なかれ主義による無責任な考え方です。現実と乖離した詭弁といってもいいでしょう。
そもそも
第三者が仕様書を作成すれば,特定のベンダに偏らない「公平な」仕様書ができる
と考えるのは間違いです。事実,本件でコンサルが作成したとされる仕様書は,「多くの企業が入札に参加できるように」と配慮した結果,その分量はぺらっぺらとなり,内容が曖昧であるばかりか,本来必要とされる機能まで削られた出来映えとなりました。前回説明したとおり,このような仕様書で入札に臨めば,圧倒的に現行ベンダが有利であったのは明らかです。事実,その入札は,現行ベンダの1者応札という結果に終わっています。
仕様書作成業務は,本来,国循が責任をもってやるべきものであって,外部業者に丸投げすべきものではありません。私は,T室長の言動や,国循の現場スタッフの様子から,国循には,
仕様書の内容はX社に責任がある
と,まるで人ごとのように考える風潮があることに,危機感と違和感を覚えました。
◇ ◇ ◇
さて,もう一歩踏み込んでみましょう。
発注者側が業務委託したコンサルは,そもそも,第三者なのでしょうか。
単純に考えてみても,コンサルにとってみれば,発注者側(今回は国循)は「お客様」です。発注者の意向に沿った内容で仕様書を作るのは当然として,国循内部に「現場」と「事務部門」の利害対立があったとしたら,果たしてコンサルはどちらを優先するでしょうか?
ここで思い出していただきたいのは,本来,仕様書を作成するのは,国循では「調達企画室(または契約係)」という事務部門の職務であることです。したがって,「仕様書作成業務」の真の発注者は事務部門です。当然,仕様書の内容には,事務部門の意向が強く反映されると考えられます。事実,私が目にした仕様書は,端末の台数が明らかに不足していたのですが,それに対するコンサルの答えは「事務から言われたので」というものでした。端末がなくては仕事ができない部署があるのにもかかわらず,お構いなし,ということでした。
また,コンサルは,そもそも,すべてのベンダに対して公平なのでしょうか。
もしコンサルが特定のベンダと取引をしていたら,どうでしょうか。
- コンサルが第三者を装い,特定のベンダに便宜を図る(そしてその見返りを受ける)
ことは十分に起こりうることです*2。コンサルの取引関係をすべて発注者側で把握することは事実上不可能なので,このような問題には有効な対策がないことも明らかです。
このようなことからも,
ことは明らかです。業界の人であれば,だれもがそう思っているとは思いますが,あえてここで明言しておきます。
◇ ◇ ◇
まとめると,以下のようになります。
最後に,勘違いしないでいただきたいのですが,私は,仕様書作成を担当するコンサルはすべからく第三者的であるべきとか,すべてのベンダに対して公平であるべき,と言いたいわけではありません。第三者が(極端にいえば誰が)仕様書を作っても偏りは存在する,と認識することが重要です。
むしろ,発注者側が,上のような実情を知りながら,
- コンサルに依頼したのだから,公平なのだ,自分たちに責任はない,
という,対外的な言い訳作りのために,コンサルに仕様書作成を依頼していることが問題なのです。仕様書を作るのに専門知識が必要といった場合や,手が足りないというときに,にコンサルにお願いすることはありうるでしょう。しかし,それが発注者の免罪符になるわけではなく,ましてや「第三者が作ったものなので公平なものです」というお墨付きにもならないことを心得るべきです。
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