誰か知る松柏後凋の心

たれかしる しょうはくこうちょうのこころ

とにかくモノが足りない!【国循着任直後に直面した課題(電子カルテ導入作業)シリーズ④】

私が国循着任したのは,電子カルテ稼動のわずか4ヶ月前でした。このシリーズ①②で,電子カルテ仕様書に問題があったことはすでに述べました。

このことと大きく関係しますが,私の着任時点ですでに仕様書上明記されていない機器や備品を大量に追加調達しなければならない状態になっていました。

しかもこれに対する予算措置もなければ,具体的にどの製品をどれだけ買うかについてもまったく決まっていませんでした

稼動まであと4ヶ月です。私は,このようなせっぱ詰まった状況の中で,まさか,「当然あるべきモノが足りていない」という事態に対処することになるとは思いもしませんでした。

本来,電子カルテ導入作業で最も難しいのは,現場との運用調整を踏まえた国循全体でのシステム運用に関するコンセンサスの形成(ルール作り)です。私は「困っているから助けて欲しい」という国循側の意向を聞いたとき,当然このような難しい調整作業が待っているものと覚悟をしていたのですが,まさか,

  • 「超過密な」スケジュールのなかで,「単にモノを買う」作業に追われる

ことになろうとは思ってもみませんでした。もちろん本来の調整業務も大量にあるなかで,の話です。

◇  ◇  ◇

とりわけ最も頭を悩ませたのは,電子カルテ端末(PC)の台数の不足でした。現場で必要な台数と,仕様書で示された台数との間に,100台以上もの開きがあり,現場でいくら調整しても端末が不足することは明らかでした。現場の方では,

すでにヒアリングで要望は伝えてある。その要望に対してダメだという話は聞いていないから,当然その端末があるものと考えている。

という状況です。

私の前任者であるT室長に

なぜこのようなことになったのでしょうか

と尋ねると,

予算の関係で落としたのではないですか

と,まるで人ごとのような回答がありました。これではらちが明かないので,その後,周りの人から聞いてみると,当時,次のようなことが起こっていたようでした。

  • 必要な端末台数は,仕様書作成を担当したコンサルが調査した。
  • コンサルは,多くの台数が必要であることはわかっていたが,あらかじめ決められていた予算を増やすことができない,と事務部門から言われた。
  • そこで,コンサルは,とりあえず予算内に収まるように端末台数を調整した仕様書を作成した。
  • この調整の事実は現場にはフィードバックされていなかった。
  • 管理側は,当該システム導入年度の予算でなんとかなるだろうという認識だった。

当時,医療情報部(私が部長を務める部署)に配分されている予算はまったくありませんでした。私がN病院長に,

電子カルテの端末やその他諸々,必要な備品がまったく足りていないのですが,どうすればよいのでしょうか。

と尋ねると,病院長は,

毎年10月~11月ごろに行われる「病院ヒアリング」という場で,各部署からの要望を聞いている。

この要望を集約したうえで,当該年度の執行残予算をみて何を購入するのかを決めるので,その「ヒアリング」に課題として上げてもらいたい。

と言うのでした。

私は耳を疑いました。PC100台といえば,ソフトウェアや設置費用を含めて,総額で軽く1000万円を超えます。このような高額な物品の調達にそれなりの時間がかかることは素人の私にも分かることでした。翌年の正月明けに稼動していなければならないPCを100台も買うのに,11月に予算がついて間に合うわけがありません。100台に対する設定作業の時間も必要です。しかも,ヒアリングの結果によっては「モノが買えない」という事態になるかもしれないことを考えると,

そもそも,こんな状態でシステム更新ができると思っていたのか

と唖然としました。

不足していたのは端末だけではありません。スキャナやバッテリ,端末を新置する場所の什器などに至っては,なにをどれだけ揃えればよいのか,まったく何の手がかりすらありませんでした。

◇  ◇  ◇

ここで,もっとも問題であったのは,当時の調達責任者が,

  • 単に「予算が足りないから」という理由で必要な機器を仕様書から外し,
  • 次年度の予算について何の確約もないのに「なんとかなるだろう」と思い,
  • しかもこれらのことを現場に伝えていなかった,

ということです。

また,これに対してシステムを管理する者が何も言わなかったということも大きな問題です。「システム管理部署が易々と事務方の都合に迎合し,現場の都合は無視する」という無責任体質が露見したともいえるでしょう。国循では,それほどまでに事務部門の力が強い,ということを表しているとも言えます。私がかつて勤務していた大学病院ではむしろ事務方は弱い存在でしたので,国循独特のこのような力関係を見せつけられたことは大変な驚きでした。

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