勾留生活~開かない窓,閉まらない窓~
『国循サザン事件』での勾留中の話をつづけます。
ブログを途中から読み始めた方のために:この事件は,私が官製談合防止法違反という無実の罪のかどで起訴され被告人となり,現在,大阪地裁で裁判が行われている事件のことです。詳しいいきさつは,
国循サザン事件―0.1%の真実― | 国循官製談合事件の容疑者として起訴された桑田成規さんを支援します
をご覧下さい。
私が大阪拘置所に入っていたのは,2014年11月18日から12月11日の24日間でした。ちょうど寒くなる時期です。下の図は,その間の大阪府の気温を表すグラフです*1。
12月に入って,ぐっと気温が下がったのがわかると思います。このとき,拘置所の独房は本当に寒くて困りました*2。
というのも,部屋の窓がきちんと閉まらなかったのです。部屋の窓は,昔の小学校によくあった「鉄サッシ」の引き違い窓でした。ちょうど漢字の「目」の形のように,全体の枠の他に,水平に2本,鉄製の枠棒が渡してあるものです。
初めてこの部屋に入ったとき,拘置所の職員(担当さん)から,ここでの暮らしのルールや部屋の設備の使い方などを教えてもらったのですが,そのとき,
あ,ここの窓は閉まらないからね
と軽く言われたことが記憶に残っています。
そもそも窓を開けようとしても,片方の窓は固定されていて動きません(なので,正確には「引き違い窓」ではありません)。かろうじて動きそうな,もう一方の重たい窓をぐっと押すと,最大で10cmほど窓が開きました。もちろん開いたところで10cmの隙間では身体を外に出すことは絶対無理ですし,外には鉄製のブラインドが付いているのでほとんどなにも見えません。
そして,反対側に窓を戻すと,数センチメートル開いたままのところで,それ以上は閉まらなくなりました。
その当時は,
そうなんだ,「開かない」のは逃走防止の意味だろうし,「閉まらない」のにもなにか意味があるんだろうな
と思っていました。
しかし,窓が開いているため,夜は本当に冷えて寒く,ほとんど外にいるのと変わらないように思えました。
このことを,取調中に検事に言ってみたところ,「そのようなことはないはずだ」と言うのでした。後日,検事は拘置所の職員に尋ねてくれたようですが,とくに改善はみられませんでした。
しかし12月に入って本当に寒さがこたえるようになってきたので,思い切って担当さんに,
部屋の窓って,これ以上閉まらないんですか?
と聞いてみました。担当さんは,
そうなんだよ,ここは古くて,この建物の部屋の半分ぐらいはちゃんと窓が閉まらないんじゃないかな。
と教えてくれたのでした。つまり,経年劣化により窓が動きづらくなったが,直していない,ということです。担当さんの様子からは,さもそれが当たり前のような感じであったので,とても驚きました。
なんで日本でこのようなことが起こるのだろうととても不思議です。職員は見て見ぬふりをしているのか,雨風しのげるだけでも贅沢と思え,ぐらいの目線で拘留者をみているのか。これが無罪かもしれない人間にする仕打ちなのか。日本では,被疑者勾留や未決勾留の時点で,当該被疑者・被告人に対する推定無罪の原則などまったく当てはまりません。
担当さんはとてもよい人でしたが,ことこの件に関しては,もう諦めている,という感じでした。彼らのような「下っ端」は知っていても,上層部は知らされていないのでしょう。刑事司法のゆがみは,こういう小さいところにも現れている,と感じられた光景でした。
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