誰か知る松柏後凋の心

たれかしる しょうはくこうちょうのこころ

私が国循で働くようになったわけ

平成23(2011)年8月上旬ごろ、私は、当時の上司である松村泰志先生(大阪大学医学部附属病院医療情報学講座教授)から教授室に来るように言われました。

そのころ,私は,平成23年3月から松村教授の下で准教授として仕事を始めたばかりの時期でした。松村教授の主宰する研究室は私の出身母体であり,ある程度勝手はわかっていたつもりだったのですが,学位取得後,私は他大学の教員を7年ほど務めていましたので,そのころは,知らぬ間に大きく変わった阪大の病院情報システムのことなどを勉強したり,大勢いる同僚たちとコミュニケーションしたりするのに,まだ慌ただしさの残る時期でした。

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わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』⑥(最終回)~取り調べ可視化と司法取引~

今回が,私の心のバイブル『取調べを受ける心がまえ』*1シリーズの最終回になります。

なお,この『バイブル』の原典は,岐阜弁護士会美和勇夫弁護士の著された『美和ノート』*2です。

さて,最終回は,取り調べ可視化と司法取引について書いてみたいと思います。この話題については,2015年夏~秋頃に国会で議論された『刑事司法改革関連法案』にも含まれていたので記憶に新しいと思います。

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わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』⑤~供述調書に納得すれば署名していい?~

今回は,私の心のバイブル*1の神髄部分,『供述調書』について書きます。

この『バイブル』で,著者ら(岐阜弁護士会美和勇夫弁護士と大阪弁護士会秋田真志弁護士)が最も言いたいことは,間違いなく

  • 納得できない供述調書に署名をする必要はない

ということです。『バイブル』にはこうあります:

*1:『取調べを受ける心がまえ』http://shin-yu-lawoffice.com/miwa-akitanote.pdf

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わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』④~作り出される矛盾に苦しむ被告人~

前回のブログの最後に,

被疑者が真実を話すのであれば,その話と矛盾する証拠など出てくるわけがない

と考えることは間違いだと書きました。

証拠には,物証と人証があります。ここでは大まかに,前者が文書,後者が証言と考えます。

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わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』③~なぜ検察は知りたがるのか~

前回のブログでは,取り調べがいかにつらいものか,ということを私の体験を交えて書きました。

では,どうやって取り調べに向き合えばよいのでしょうか。

そこで,バイブル*1の登場です*2。バイブルでは,被疑者の心がまえとして,つぎのようにアドバイスしています。

*1:『取調べを受ける心がまえ』http://shin-yu-lawoffice.com/miwa-akitanote.pdf

*2:この記事ではバイブルと呼びますが,もちろん,これはキリスト教における聖書の意味ではありません

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わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』②~検事にいわれてつらかったこと~

前回のブログでは,身体拘束されている勾留中の取り調べは長くつらいもの,と書きました。

しかし,自分の身が自由にならないから,という理由だけで,取り調べがつらいのではありません。これにくわえて,取り調べには,

あなたの言い分を、取調官に分かってもらえる、という期待をもってはいけません。
取調官は、あなたがほんとうのことを言っても、とにかく疑ってかかるようにと教育を受けてきたからです。「ほんとうのことを言えば、分かってもらえる」と思っていた無実の人が、どんなに言っても、信じてもらえなかったことに絶望し、ウソの自白に至ってしまうことは非常に多いのです。(『取調べを受ける心がまえ』*1

という状況があります。

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わが心のバイブル―『取調べを受ける心がまえ』①~調べは山登りやマラソンのように長くつらいもの~

2014年2月に国循に強制捜査が入ってから,同年11月に逮捕されるまでの間,私(桑田)が心のバイブルとしていた冊子があります。

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大阪弁護士会の秋田真志弁護士が,ご自身の事務所のホームページで公開しておられる『取調べを受ける心がまえ』*1です。

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